礼装着物の心得

心浮きたつ日の装い
周囲との調和を第一に
立場と着物の格を合わせます

人生の節目となる晴れの日。「何を着ていこうか」と考えるだけでわくわくします。
が、ある意味公の席ですから、会合の趣旨、ご自身の立場(主催者との関係)や開催される会場などを考慮し、ふさわしい着物を美しく着こなして下さい。

出席する立場で決まる慶事の着物

慶事といえば、まず結婚式でしょう。
仲人夫人、母親は既婚女性の第一礼装である黒留袖を着用するのが一般的です。叔母や既婚の姉妹は黒留袖もしくは色留袖となります。
色留袖は裾模様のみという点は黒留袖と同様ですが、落ち着いたものから華やかなものまで、色も柄も好みで選べます。叙勲、格式の高いお茶会、卒業生を送り出す担任などが着用します。
なお、留袖は必ず紋を入れ、比翼仕立てにします。仕立てなどについては信頼できるお店に相談するのが良いでしょう。

黒留袖の画像

留袖に比較して着用範囲が広いのが訪問着です。結婚式でも黒留袖や色留袖は親族ですが、友人や会社の同僚という立場であれば訪問着をおすすめします。肩に模様があるので、着席しても華やかです。
お子様のお宮参り、入学式・卒業式の付き添いや七五三、十三参りの付き添い、ハーフ成人式での記念撮影やホテルなどでの同窓会、パーティー、お正月のあいさつなど、一着あれば行事やお付き合いなど、すべてこなせるものです。

留袖や訪問着は自分の趣味や楽しみのために着用するものというよりも、相手との関係や社会的な立場によって着用するものです。したがって、決まり事も多く、柄行も古典的なものが多いのですが、それだけに着物の粋が凝縮された美しさがあります。

着こなしはあくまでも上品に

留袖、訪問着は礼装になります。ですから、帯もそれにふさわしい金糸、銀糸を使った袋帯で華やかに装います。黒留袖の場合は帯締、帯揚、長襦袢も白になります。
訪問着も帯は金糸、銀糸を使用したものや唐織が似合います。伊達襟があればフォーマル度がさらに増します。長襦袢も薄い色のもの、草履は高さがあるものを選びます。
さて、着物と帯、帯揚げ、帯締などの小物が決まったら、着付けです。
“ザ・着物”という感じで着付けます。ポイントは襟。白半襟が若干多めに見えるようにし、襟合わせをきっちりと。帯幅は広めにし、お太鼓も大き目につくり、華やかさを演出します。
帯には末広を忘れずに差しておきます。この末広であおぐことはありませんが、帯周りが引き締まります。
髪もアップにする、セットするなどして、フォーマル感をだします。着物が豪華であるほど、髪がいつものままですとアンバランスが目立ちます。

黒紋付について

フォーマル着物で忘れてはならないのが、黒紋付。地歌や三味線など、和のお稽古事ではお馴染みですし、宝塚音楽学校での正装はこの黒紋付に緑の袴です。ですが、日常生活ではやはり不祝儀の席での喪主や親族の装いとして知られています。
喪服はあまり着用するシーンはないのですが、いざというときにないと困るものでもあります。そして、困るのがつくるとき。時期を選ばないと「黒紋付をつくったけど、死ぬのを待っているの?」という突っ込みから無用な争いに発展しかねません。
そこで、お勧めなのが、18歳(高校を卒業し、喪服が必要になるとき)、20歳(いわずとしれた成人式)、そして嫁ぐとき(嫁入り道具として持っていく)です。ここを逃した場合、子供の誕生、子供の七五三や入学式など、慶事に作るのもよいとされています。
喪服として黒紋付を着用するときは全員が黒を着用する席です。したがって、染めの良しあしがはっきりとわかります。一生に何度も作り変えるものではないだけに、納得のいくものを、アフターケアのしっかりとしたお店でつくることをお勧めします。
このとき、草履や帯締帯揚などの小物、長襦袢(同じ白でも地紋が慶事とは異なります)も一緒に揃えておくと、いざというとき慌てずにすみます。